歯がしみる4つの原因とその対処法

歯がしみる その他

歯がしみるとは、冷たいものや熱いもの、歯ブラシの接触などの刺激によって起こる一時的な痛みのことです。

歯がしみる症状は歯の神経が刺激されることで起きますが、その原因は大きく4つに分類されます。

原因ごとに対処法が異なりますので、原因をしっかり特定して効果的な対処を行いましょう。

歯の構造

歯の構造は、 歯髄(神経)、象牙質、エナメル質の3層からなります。

エナメル質

エナメル質は歯の一番外側を覆う部分です。人体で一番硬い組織で、歯を外力などの刺激から守る働きをしています。

象牙質

象牙質は、エナメル質の内側にある、歯の主体をなす組織です。

象牙質には象牙細管と呼ばれる小さな管が中心方向に向かって走行しています。

象牙質の構造

このため、象牙質に刺激を与えると、象牙細管を通して歯髄に刺激が伝わり、歯がしみるなどの症状が現れます。

歯髄

歯髄とは、歯の最も中心に位置する柔らかい組織です。血管や神経が分布しており、歯の痛みやしみる症状は歯髄が刺激を受けることで生じます。

歯がしみる原因

歯がしみる場合、ほとんどが象牙質や歯髄に原因があります。

歯がしみる具体的な原因としては。主に以下のようなものがあります。

●虫歯によるもの

虫歯の原因菌は糖分を栄養にして酸を産生します。この酸により歯の表面が溶けることで虫歯が始まります。

虫歯がエナメル質を超えて象牙質まで到達すると、歯がしみる症状が現れます。

これは、象牙質には象牙細管という8~20μmの太さの穴が数千本存在し、象牙細管を通して刺激か神経まで伝わるからです。

虫歯菌が歯髄まで到達すると、高確率で何もしなくてもズキズキする痛みが生じるようになります。

●歯茎の退縮によるもの

象牙質を覆うエナメル質は歯茎より上の部分にしかないため、歯茎が下がって根っこの部分が露出すると、象牙質が剥き出しの状態になってしまいます。露出した象牙質部分に歯ブラシの毛先や冷たいものが当たると、しみる症状が出る可能性があります。

●歯の破折・破損によるもの

強い力がかかり歯が破損した場合、象牙質部分が露出することがあります。

また、咬耗が原因で象牙質が露出する場合もあります。歯は使っているうちに徐々にすり減っていくため、歯ぎしりなどが酷い場合は噛み合わせの面のエナメル質が全て咬耗で失われてしまい、象牙質部分が露出してしまいます。

●酸性食品・逆流性食道炎の影響によるもの(酸蝕症)

酸性食品や胃酸など、虫歯菌以外の原因の酸によって歯が溶けてしまうこともあります。

細菌関与のない化学的な歯の溶解は、虫歯と区別するために「酸蝕症」と呼ばれます。

酸蝕症は原因によって外因性と内因性に分類されます。

外因性の酸蝕症

酸性飲食物など外的要因によっておこる酸蝕症を外因性の酸蝕症といいます。

エナメル質はpH5.5以下の酸性の環境になると溶け始めます。

ペットボトル飲料物などは細菌増殖を防ぐために添加物で酸性になっているものが多いです。

酸性飲料物の過剰摂取の常態化は酸蝕症の原因となります。

また、アルコール類も赤ワインはpH3.8、ビールはpH4.3とpH5.5以下であり、寝酒を習慣的に行っていると酸蝕症の原因になりえます。

内因性の酸蝕症

逆流性食道炎など内的要因によっておこる酸蝕症を内因性の酸蝕症といいます。

近年は逆流性食道炎の有病率が高くなってきており、胃液による酸蝕症にも注意する必要があります。

逆流性食道炎の有病率を各年代別にみると、男性では30歳代から70歳代までは15%前後、80歳代を越えると25%前後に増加します。

女性では30歳代から50歳代までは10%前後、60歳代で約15%、70歳代では約20%、80歳代を越えると30%と、加齢にともない増加します。

若年から壮年での有病率は男性の方が高く、高齢者では女性のほうが有病率は高くなります。

この有病率の性差は、男性では中高年のメタボリック症候群や高脂肪食、アルコール摂取が関与し、高齢女性での有病率の上昇は、閉経後骨粗鬆症が関与する圧迫骨折とそれによる円背・前傾姿勢、腰痛に対するコルセットの使用などが関与していると考えられています。

対処法

●虫歯によるもの

虫歯菌に感染している部分を取り除き、人工の材料にて修復します。

小さな虫歯の場合は、コンポジットレジンと呼ばれる白い樹脂の詰め物で修復を行います。

虫歯の範囲が大きい場合は、強度を得るために金属を使った治療となります。(保険診療の場合)

歯科用CAD/CAM装置「セレック」を使えば、範囲が大きい虫歯でも一日で治療することが出来ます。(保険適応外治療、歯の状態によっては根管治療や歯周病治療を事前に行う必要があります。)

虫歯が歯髄にまで及んでいる場合、歯髄に入り込んだ虫歯菌を取り除くために根管治療が必要となります。

●歯茎の退縮によるもの

まずは露出した象牙質部分に知覚過敏を防止する薬を塗り込み、コーティングをすることで外からの刺激を受けにくくします。

それでも効果がない場合は、樹脂の詰め物などでより強固なコーティングを行います。

歯周病が進行している場合などでは、歯茎の手術が必要になることもあります。

●歯の破折、破損によるもの

破損の状態が軽度であれば、コンポジットレジンと呼ばれる白い樹脂の詰め物で修復を行います。

破折したままでいるととそこから虫歯になり、その場合には虫歯の治療が必要となります。

歯の根元に亀裂が入ったり割れたりする歯根破折では、抜歯が必要になることもあります。

●酸性食品、逆流性食道炎の影響によるもの(酸蝕症)

まずは対症療法として、象牙質が露出してしまった部分を被せ物や白い樹脂の詰め物などで修復します。

その後原因療法として、原因となる飲食物の摂取を控える、消化器内科を受診して逆流性食道炎の治療を受けるなどの処置を行います。

その他、フッ化物を応用してエナメル質の耐酸性を高める、唾液分泌を活発にして歯の再石灰化を促すなどの補助療法を適宜併用します。

まとめ

歯がしみる症状は、一時的な痛みであることから放置してしまいがちですが、虫歯などの病気が原因の場合は、放置しているとどんどん悪化していきます。

病気が進行してからの受診の場合、処置が大掛かりになり費用も時間もかかるようになることがあります。

早めに受診して、適切な治療を受けましょう。

参考文献

日本歯科医師会 テーマパーク8020 知覚過敏

この記事を書いた人
八島 愛富

八島歯科クリニック 院長

歯科医師
広島県歯科医師会・会員
広島市介護認定審査委員経験者(1999年~2003年在籍)
臨床研修指導歯科医
広島デンタルアカデミー専門学校 講師
ケアマネージャー資格保持者
広島県がん診療連携登録歯科医

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