セレックとは、医療先進国ドイツで開発された、コンピュータ制御によって歯の修復物を設計・製作する医療器械です。
セレックを使うことで、歯を削って型取りをしたその日にセラミックの被せ物を装着することが可能です。
歯を削ってすぐに被せ物を装着することには 、様々な利点があります。
歯の表面が汚染されない
歯を削ってすぐに被せ物を装着すれば、削った部分が細菌に汚染される心配がありません。
従来の方法では、型取りをしてから被せ物を装着するまでには1週間程度間隔が空きます。このため、その間は削った部位に仮蓋をします。
しかし、仮蓋と歯の間にはどうしても隙間ができてしまうため、隙間から細菌が入ってきます。
一週間も仮蓋の状態でいると、露出した象牙質部分が細菌に汚染されます。
健全な象牙質

細菌感染が起こった象牙質

象牙質に細菌感染が起こった状態で被せ物を装着すると、長期的な予後に不安が残ります。
歯を削ってすぐに被せ物を装着すれば、そのような心配はありません。
セラミックと歯をくっつける接着剤が良くくっつく
歯の表面が汚染されないため、歯とセラミックをくっつける接着剤がよくくっつきます。
従来の方法では削った部分が細菌に汚染されるため、接着阻害が起こる危険性があります。
しかし、歯を削ってすぐに被せ物を装着すれば、接着阻害が起こる心配はありません。
このため、従来のものと比べて被せ物が緩みにくいです。
緩んで隙間が空くことが無ければ、虫歯の再発が起きにくくなります。
金属アレルギーの心配がない
セレックは、工場で規格生産された高品質セラミックのブロックを削って被せ物を製作します。
金属を使わないため、金属アレルギーの方も安心して治療が受けられます。
人件費がかからない分、安価
セレックは、コンピュータを使って設計・製作を行うため、その分人件費がかかりません。
従来の方法では、国家資格を持った歯科技工士が顕微鏡を使って手作業でセラミックの被せ物を製作します。

セラミックの被せ物の原価の大部分は人件費です。コンピュータを使って人件費を抑えることで従来のものより価格を下げてセラミック治療を提供できます。
ジルコニアにも対応している
セレックはジルコニアと呼ばれる、強度が高く割れにくいセラミック材料にも対応しています。
従来のセラミックは強い力がかかる奥歯の場合は割れる心配がありましたが、ジルコニアは奥歯に使用しても割れる心配はほとんどありません。
セレック治療の流れ(ジルコニアの場合)
①光学カメラで撮影して歯型を採取
②コンピュータで被せ物を設計
③ミリング装置でセラミックの被せ物を製作
④削り出したセラミックを焼成※
(※ジルコニアの場合以外は、④の焼成処置は不要となります。)
セレックのデメリット
金属材料には対応していない
セレックが対応している材料は、セラミック、ジルコニア、ハイブリッドレジン、仮歯用の樹脂などです。金属は対応していないため、金属の被せ物を製作することはできません。
色の再現性は従来のものに劣る
セレックは規格生産されたブロックを削って被せ物を製作するため、ブロックにない色は再現できません。
それに対して、従来の手作業で製作する方法では、筆でセラミックを盛り上げて色や形を作っていくため、その人に合わせた色のセラミックを製作することが可能です。
従来の方法

まとめ
セレックにより、型取りをしたその日にセラミックの被せ物を装着することが可能です。
従来の方法では、型取りをしてから1週間程度間隔をあけて被せ物を装着する必要がありました。
その場合、削った部分が細菌に汚染され、歯と被せ物をくっつける接着剤がしっかり付かない危険性があります。
セレックで歯を削ったその日に被せ物を装着すれば、細菌汚染の心配がなく、歯と被せ物がしっかりと接着されます。
ただし、色の再現性は従来の手作業で作るものの方が再現度が高く、メリット・デメリットをよく検討したうえで治療法を選択する必要があります。