虫歯とは、歯垢(プラーク)の中の虫歯菌が出す酸によって歯の表面のカルシウムが溶け出し、穴が開いてしまう病気です。
ただし、虫歯菌がいればすぐに虫歯になるというわけではありません。
虫歯菌は常在菌と言って誰でもお口の中に持っています。
それなのに虫歯になる人とならない人がいます。
その違いはどこからきているのでしょうか?
虫歯が出来る原理
歯の表面についたプラーク中の虫歯菌は、砂糖などの炭水化物を分解して酸を作ります。
その酸によってプラークの中、つまり歯の表面は酸性になり、カルシウムが溶け出します。
これを「脱灰」といいます。
酸は唾液の作用によって中和され、再びカルシウムが歯の表面に戻ります。
これを「再石灰化」といいます。
歯の表面では、常にこの脱灰と再石灰化が繰り返されています。
頻繁に砂糖などを取り続けていると脱灰が進み、歯の表面が柔らかくなり、最後には穴が開いて虫歯ができます。

虫歯になりやすい人、なりにくい人
風邪をひきやすい人は、マスクをしたりうがいをしたりと、一般の人よりも予防を心がけます。
虫歯も病気なので、たとえ同じ食事、同じ生活習慣をしていても、かかりやすい人、かかりにくい人がいます。虫歯にかかりやすい人は、一般の人よりも予防に力を入れなければなりません。

虫歯のなりやすさを、私たちは「う蝕リスク」と呼んでいます。
虫歯リスクは「細菌」「唾液」「食習慣」の3つの要素の個人差で決まってきます。
リスクが低ければ基本的な予防法で良いのですが、リスクが高い人は、他の人より予防に力を入れなければなりません。しかし、リスクが高い人すべてに同じような方法を行えば良いかというと、そうではありません。
リスクを高めている要因は人によって異なりますので、それぞれの人に合わせたアプローチが必要です。
虫歯のなりやすさセルフチェック
以下の項目が当てはまるほど、ハイリスクです。
- 今までに虫歯になったことがある
- 磨き残しが多い
- 甘いものをよく食べる
- 一日中、飲んだり食べたりする
- 歯磨きはあまりしない
- フッ素入り歯磨き剤を使っていない
- 定期健診を受けていない
虫歯になりやすい部位

虫歯は汚れがたまりやすく掃除がしにくい場所にできます。
歯の溝部分、歯と歯の間は虫歯が出来やすく要注意です。
もし虫歯が出来てしまった場合、重症化する前に早めに治療する必要があります。
虫歯の進行レベルによる分類と治療法

虫歯は重症度からC0~C4の5段階に分類されます 。
CO 初期の虫歯
家に例えると
歯の状態
初期の虫歯では、表面が白く濁った色になったりざらざらした感じになります。まだ穴は開いていない状態です。
この段階であれば、しっかりとした処置をすることで削らずに自然治癒(再石灰化)させることが可能です。
治療法
口腔内清掃指導とフッ素塗布を行い、再石灰化を促進させます。
C1 軽度の虫歯
家に例えると
歯の状態
歯の表面にあるエナメル質に小さな穴が出来た状態です。
痛みなどの自覚症状がほとんどないので、気づかないこともあります。
治療法
虫歯の部分を削って、細菌感染した部分を取り除きます。
その後、空いた穴にコンポジットレジンと呼ばれる白い樹脂の詰めものを充填して穴を埋めます。
C2 中等度の虫歯
家に例えると
歯の状態
エナメル質の奥の象牙質まで虫歯が進行した状態です。
ここまで進行すると、甘いものや冷たいものがしみるようになってきます。
治療法
虫歯の部分を削って、細菌感染した部分を取り除きます。
虫歯が進行している分、削る量が多くなります。虫歯の範囲が広いと強度の問題から白い樹脂の詰め物が使えないこともあります。
その場合は、粘土の様な材料で型を取り、金属の詰め物や被せ物を製作して装着する治療を行います。
保険治療では広範囲に進行した虫歯は金属を使った治療となりますが、自費治療であればセラミックなどの白い材料を使って治療を行うことが可能です。
歯科用CAD/CAM装置「セレック」を使えば、虫歯を削ったその日にセラミック修復物を製作し、即日で治療を完了することが可能です。(歯の状態によっては、虫歯を削る前に歯周病や根管治療が必要となります。)
C3 重度の虫歯
家に例えると
歯の状態
歯の神経やその近くまで虫歯に侵された状態です。
神経が炎症を起こすため、何もしなくてもズキズキするような痛みを感じるようになります。
さらに虫歯が進行して神経組織が完全に死滅すると痛みを感じなくなりますが、病気が治ったわけではありません。
放置すると細菌感染が根の先から骨まで及び、骨が溶けて膿の袋が出来てきます。
治療法
神経の中にまで虫歯菌が進行しているため、神経の中の虫歯菌を取り除く根管治療が必要となります。
歯の中の根管の形は複雑なため、歯の根の中を綺麗にする治療は回数がかかります。
C4 保存困難な虫歯
家に例えると
歯の状態
歯全体が虫歯に侵された状態です。歯の根の先に膿がたまったり、歯の周りの歯茎にも病気の影響が及び、歯を残すのが難しくなった状態です。
治療法
虫歯が歯茎の下の骨にまで悪影響を与えている場合、通常感染源を除去するために抜歯が必要となります。
矯正的挺出、歯冠長延長術などの手段を使えば保存可能な場合もあります。
虫歯になっている部分を歯茎より上に出して骨への悪影響を無くすことが出来れば、歯が保存できる可能性があります。
う蝕を予防するためには
虫歯の基本的な予防法は、下の3つがポイントとなります。
●フッ化物を使用して歯を強くすること
●虫歯菌の餌となる砂糖などを減らすこと
●ブラッシングで虫歯菌を減らすこと
フッ化物の使用
ブラッシングでは、丁寧に磨くのに加え、フッ化物を使用しましょう。
フッ化物は歯を強くするだけでなく、再石灰化を促進します。
フッ化物がお口の中に長く残っているほど、再石灰化は促進されます。
ですから、できるだけフッ化物をお口の中に残すようにするため、ブラッシングの後はお口をゆすがないようにするか、ごく少量のお水で一回だけゆすぐようにしましょう。
虫歯菌の餌となる砂糖などを減らす
ブラッシングでお口の中の細菌を取り除くことも大切ですが、細菌をゼロにすることはできません。残った細菌に餌を与えれば、また増えてしまいます。細菌が特に増えやすいタイプの人は、細菌に餌を与えないように、規則正しい食生活を取り入れましょう。
食生活から虫歯のリスクを改善するポイントは
「砂糖の量」「飲食回数」「時間」「何を食べるか」の4つです。
まずは間食の回数を減らすことが効果的です。間食の回数を減らせば自然と砂糖の摂取量も減ってきます。どうしても回数を減らせないときは、キシリトールなどの代替甘味料を使ったノンシュガーのお菓子にしましょう。
次に食事や間食をとる時間を決めておくことも重要です。
ダラダラ食いは避け、食べる/食べないのオンオフをしっかり切り替えることが大切です。
おやつは、キャラメルのような粘着性のあるものは避け、お口の中から早くなくなるものを選びます。砂糖の含有量が同じでも、食品の停滞性の高低(どの程度お口の中に残りやすいか)によってう蝕リスクはかなり変わってきます。スナック菓子のような、甘くなくてもお口の中に残りやすいものは要注意です。
果物やスポーツドリンク、野菜ジュース、缶コーヒーなどには意外に糖分が含まれていることがありますので気を付けましょう。
まとめ
虫歯とは、歯垢(プラーク)の中の虫歯菌が出す酸によって歯の表面のカルシウムが溶け出し、穴が開いてしまう病気です。
ただし、虫歯菌がいればすぐに虫歯になるというわけではありません。
虫歯菌は常在菌と言って誰でもお口の中に持っています。
虫歯菌の餌となる砂糖や炭水化物があり、時間が経過することで初めて虫歯ができます。
このため、虫歯菌の餌となる砂糖などを減らすことで虫歯を予防することが出来ます。
また、歯の表面がフッ化物で強化することで、より効果的に虫歯菌の発症は防げます。
歯に穴が開くほど虫歯が進行した場合は治療が必要となりますので、早めに歯科医院を受診しましょう。