フッ素は現在最も虫歯抑制効果が高いことが科学的に立証されている虫歯予防処置です。
フッ素を上手に利用することで、効果的に虫歯予防を行うことが出来ます。
フッ素とは
フッ素は、土の中、海の中、動物や植物など自然界に広く分布している元素です。
肉、魚、野菜、お茶など私たちが毎日食べたり飲んだりするもののほとんどに含まれている必須栄養素の一つです。
フッ素の3大効果
フッ素は歯質に対する直接的な作用と歯垢中の細菌に対する間接的な作用によって虫歯抑制作用を発揮します。
フッ素による虫歯抑制作用は大きく分けると以下の3つの作用からなります。
初期虫歯を治す作用
歯から溶け出てしまった「リン」や「カルシウム」が再び歯に戻ろうとする作用を再石灰化と言います。
唾液には歯の再石灰化を起こす作用がありますが、フッ化物が存在すると歯の再石灰化がより促進されます。
表面が白濁しているだけの初期の虫歯であればフッ素の効果により治癒させることが期待できます。
酸に溶けにくい歯を作る作用
エナメル質が再石灰化する際にフッ化物が存在すると、フッ化物が歯に取り込まれてフルオロアパタイトが生成されます。
フルオロアパタイトは耐酸性が高いため、フルオロアパタイトが生成されることで酸に溶けにくい歯になります。
虫歯菌の働きを弱める作用
フッ素には抗酵素作用があります。
1.2ppm程度でもフッ化物はう蝕原性細菌に作用させると酵素活性を阻害し、酸産生を抑制することが知られています。
歯科医院でのフッ素塗布とフッ素入り歯磨き剤の違い
歯科医院で使用するフッ素は9,000ppmという高濃度のものです。
3~6ヵ月に1回歯の表面に塗布することにより、酸に溶けにくい歯を作るように促す効果があります。
一方で、家庭で使用するフッ素入り歯磨き剤には1,000~1,500ppm程度の低濃度のフッ素が入っています。
こちらは毎日使用することにより、お口の環境を虫歯になりにくくする効果が期待できます。
両方の方法を組合わせることでより効果的な虫歯予防効果を得ることが出来ます。
フッ素塗布による虫歯抑制効果
フッ素に関しては多くの臨床疫学調査があり、おおむね20~40%の虫歯抑制効果があるとされています。
また、幼児の早い時期から頻回に行った場合では30~70%の虫歯抑制効果があるとも報告されています。
フッ素塗布はいつ頃からすればよいのか
フッ素による虫歯抑制効果は萌出直後の歯の方が効果高いことが報告されています。
このため、乳歯が生え始めるころから永久歯が生えそろうころまでが最も効果的です。
もちろん、歯が生えそろった後もフッ素を使用することで虫歯抑制効果が期待できます。
フッ素入り歯磨剤の効果的な使用方法
フッ化物配合歯磨剤の虫歯抑制作用は、歯磨き終了後に口の中に残留したフッ化物イオンによって発揮されます。
このため、使用するフッ化物の量、作用時間、うがいの回数などの要素によって効果が大きく左右されてしまいます。
フッ化物配合歯磨剤を効果的に使うには以下のような手順で使用することが望ましいです。
- 歯ブラシに年齢に応じた量の歯磨剤を付ける。(下表参照)
- 泡立てる前に歯磨剤を歯面全体に広げる。
- 2~3分間歯磨剤による泡立ちを保つような歯磨きをする。
- その後、歯磨剤を吐き出す。
- 5~15mlの水を口に含む。
- 5秒間程度ブクブクうがいをする(うがいは1回のみ)
- うがいは1回のみとし、吐き出した後はうがいをしない。
- その後1~2時間程度は飲食をしないことが望ましい
- さらに、フッ化物配合歯磨剤を用いたブラッシング回数は、1日2~3回と頻度が高いことが望ましい。
まとめ
フッ素は現在最も虫歯抑制効果が高いことが科学的に立証されている虫歯予防処置です。
フッ素には20~40%の虫歯抑制効果があるとされており、歯科医院で行う高濃度のフッ素塗布と家庭で行う低濃度のフッ素塗布を組合わせることでより高い効果が期待できます。
高濃度のフッ素塗布は年2~4回の塗布が効果的ですので、3~6ヵ月に1回歯科医院で定期健診を受けることが虫歯予防の上で効果的です。
参考文献
歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020|フッ化物