歯の根の治療(根管治療)について

根管治療

歯の根の治療(根管治療)とは

歯の根の治療(根管治療)とは、簡単に言うと歯の根の中の神経が通っている管(根管)の中をきれいにする治療です。

大きな虫歯などが原因で根管に虫歯菌が入り込んでしまった場合、噛んだ時に歯が痛い・何もしなくてもズキズキするような痛みが生じる・虫歯になった歯の周りの歯茎が腫れる、等の問題が生じます。

それらの問題を解決するためには、根管に入り込んだ虫歯菌を取り除くために根管治療を行う必要があります。

根管治療によって問題を解決できれば、もう一度噛んで食事が出来る状態まで歯を回復させることが出来ます。

根管治療は建物の工事に例えると、基礎部分の工事になります。

基礎部分に問題があると、上の建物がどんなに立派でも地震などで倒壊する恐れがあります。

歯の場合も、根の治療をきちんと行っていないと、上物にどんなにいい金属やセラミックを使っても将来的に痛みや腫れなどの不具合が出て再治療が必要になる可能性があります。

このため、根管治療は歯の予後を左右する重要な治療となります。

根管とは

根管とは、歯の根の中にある神経が通っている管状の空洞のことです。

人間の歯にはどの歯にも神経の通っている根管があります。

根管の数や形は歯によって異なります。

前歯は根管の数が少なく形も単純なことが多いですが、奥歯は根管の数が多く形も複雑に曲がっているものも珍しくありません。

根管にはとても狭くなった部分や曲がったものもあるので、感染して悪くなった部分を取り除き、殺菌消毒するのに長い治療期間が必要になることもあります。

こんな症状がある場合、根管治療が必要かもしれません

  • 何もしなくても歯がズキズキ痛い
  • 冷たいものや熱いもので歯が滲みる
  • 歯茎が腫れた
  • 歯茎に出来物ができた
  • 噛むと歯が痛い
  • 歯茎から膿が出る

根管治療が必要な状態

急性歯髄炎

虫歯菌が歯の神経(歯髄)まで到達すると、歯髄に炎症が起きて歯髄炎という状態になります。

急性の歯髄炎では、ほとんどの場合何もしなくてもズキズキする強烈な痛みが生じます。

体の他のところが化膿するときと同じで、歯髄は炎症よって化膿し腫れ上がります。

しかし、硬組織に覆われて膿の逃げ場がないため、歯の内圧が高まります。

歯の内圧が高まると、神経が強く圧迫され、強い痛みが生じるようになります。

歯が何もしなくてもズキズキ痛む時には、歯髄炎が原因の可能性があります。

炎症がひどい場合は痛み止めが効かず、夜眠れないような痛みが生じます。

そのような場合は麻酔も効きづらく、何本も麻酔を打たなければならないこともあります。

慢性歯髄炎〜歯髄壊死

さらに虫歯が広がり、象牙質にも穴が開くと、膿の逃げ場ができて歯の中の圧力が一気に下がります。

この時に痛みが引いてホッとしますが、実際には治ったのではなく、虫歯によって歯が一段と壊れた状態になっています。

虫歯が進行して歯髄が完全に壊死してしまうと、今度は痛みを感じなくなります。

根尖性歯周炎

痛みがなくなったからと放置すると、細菌の感染ははさらに進んでいきます。

歯髄が壊死しているため、歯がどんどん壊れていっても痛みを感じません。

今度は歯の内部だけでなく、もっと広範囲に、歯槽骨などへと炎症が広がっていきます。

骨にまで炎症が広がると、歯槽骨にあるセンサーが異常を察知し痛みが生じ始めます。

炎症が続く部位には膿が生じ、歯槽骨の中に袋状に溜まっていきます。

体調の良い時は平気なのですが、疲れた時、体力が落ちた時に、急に痛みが生じることがあります。

また、根の先の膿の袋が大きくなると、骨を突き破って歯茎の膿瘍を作ることもあります。

根管治療の手順

根管治療は、例えるなら建物の基礎工事に相当する大切な治療です。

根管治療は大きく4つのステップからなります。

虫歯部分の除去

まず、虫歯菌に感染した部分を取り除き、根管の形を整えます。

被せ物の中が虫歯になっている場合は、被せ物を壊して虫歯を取り除く必要があります。

根管内の清掃・消毒

根管内をファイルと呼ばれる器具で物理的に清掃したり、薬品を使って化学的に洗浄・消毒をおこなって根管内を綺麗にしていきます。

根管の数や形は歯によって異なり、とても狭くなった部分や曲がったものもあります。

このため、感染して悪くなった部分を取り除きしっかり洗浄消毒するのに非常に時間がかかることが多いです。

根管があまりにも複雑で難治性の場合は、外科的歯内療法が必要となることもあります。

根管充填

腫れや痛みなどの症状がなくなり、無菌的状態が確認できたら、根管の中を安全な材料で隙間なく充填します。

消毒して綺麗になった根管内に隙間なく材料を充填することで死腔を無くし、再度の細菌感染を予防します。

これで、口の中で末永く機能できるための基礎工事が終了したことになります。

土台を立てて歯を作る処置(支台築造・歯冠補綴)

その後は、歯の欠けていた部分を金属やグラスファイバーなどで土台を立てて補強し、その上に金属やセラミックでできた被せ物をします。

土台と被せ物によって歯の形を元のように修復し、噛める機能を回復します。

当院での根管治療の特徴

当院では治療の難しい複雑な根管にも対応する為、歯科用CT撮影装置やNiTiファイル等の設備・器具を導入しています。

歯科用CT撮影が可能

当院ではCT撮影装置を導入しております。

複雑な根根形態で処置が難しい歯でも、CT撮影により正確な診断を行えます。

CT撮影は保険適応で行えます。

CT撮影
CT撮影と根管治療

NiTiファイルの使用

ニッケル・チタンは超弾性、形状記憶という特性を有する素材です、柔軟性が有り根管の形に合わせてしなりますので、湾曲の強い根管に対しても適切な処置が行えます。

画像引用元:https://service.yoshida-dental.co.jp/ca/series/11022

通常の根管治療では治癒しない場合

根尖外に感染が及んだ場合、通常の根管治療では感染源が取り除けない場合があります。

その場合は外科的歯内療法等の処置が必要になる場合があります。

よくある質問

神経が残存している場合は、局所麻酔を行いなるべく痛みが出ないようにしております。神経を取りきった後は、治療時の局所麻酔は不要となります。

失活歯(神経の無い歯)は生活歯(神経の生きている歯)より歯根破折が生じるリスクが高くなります。ただし、根管治療を行っていなくても神経が死滅している場合は歯根破折のリスクが高い状態となります。痛みがなくても歯髄が死滅している場合は、早めの治療をおすすめします。

根管の深い部位にまでう蝕が広がると、歯の保存が難しくなっていきます。また、根尖孔外にまで感染が広がった場合、通常の根管治療では感染源を取り除けないので、外科的歯内療法や抜歯を行う必要が生じます。

参考文献

日本歯内療法学会|歯内療法ガイドライン

この記事を書いた人
八島 愛富

八島歯科クリニック 院長

歯科医師
広島県歯科医師会・会員
広島市介護認定審査委員経験者(1999年~2003年在籍)
臨床研修指導歯科医
広島デンタルアカデミー専門学校 講師
ケアマネージャー資格保持者
広島県がん診療連携登録歯科医

虫歯について