2026年診療報酬改定に向けた議論|義歯関連の議論

入れ歯の画像

2025年11月21日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会より、中央社会保険医療協議会 総会(第629回) 議事次第が公開されました。

その中に、歯科医療について(その2)が有りましたので、その中の義歯に関する項目について抽出して考察していきたいと思います。

義歯への金銀パラジウム使用、原則不可の方向で議論

保険治療の義歯のクラスプやバー等に使用する金属に関して、歯科鋳造用金銀パラジウム合金の使用を原則不可にする方向で議論されています。

資料の中で、「局部義歯に付属されるクラスプやバーについて、歯科鋳造用金銀パラジウム合金を使用する特別の理由がある場合を除き、原則、歯科鋳造用コバルトクロム合金を使用する運用に見直すことに関してどのように考えるか?」と論点が明記されていました。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598463.pdf

金銀パラジウム合金が原則使用禁止となる理由としては、貴金属価格の高騰が原因と考えられます。

金銀パラジウム合金はここ十数年価格上昇が続いており、2010年4月1日に619円/gだったものが2025年12月には3,802円/gと、15年で6倍以上の価格上昇となっています。

歯科用金属素材価格の推移のグラフ(2025年9月まで)
引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001580365.pdf

令和7年12月時点の鋳造バーの材料料は、コバルトクロム合金の点数が18点なのに対して、金銀パラジウム合金は1,975点もします。

1点=10円なので、鋳造バーの材料差額は(1,975点-18点)×10=19,570円となります。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598463.pdf

「特別の理由がある場合を除き、原則、歯科鋳造用コバルトクロム合金を使用」との記載なので、コバルトクロム合金にアレルギーがある等の場合は例外的に金銀パラジウム合金が使用できる可能性があります。

ただし、今までは不要でしたが、金属アレルギーの医科の診断書が必要等の条件がつく可能性が考えられます。

チタン・クラスプ、チタン・バー導入の可能性

学会等から提案のあった新規医療技術に関する資料にて、「チタン・チタン合金を用いたクラスプとバー」という技術提案があったので、こちらを保険導入して、金属アレルギーの場合はこちらを使用する方向になるかもしれません。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001597564.pdf

原則コバルトクロム合金になった場合の影響

原則コバルトクロム合金となり、金銀パラジウム合金が使用不可となった場合、年間170~200億円程度の医療費が削減されると思われます。

根拠は、資料に記載されていた令和6年8月審査分の鋳造クラスプや鋳造バーの算定回数等の統計データです。

鋳造バーの材料差額が(1,975点ー18点)で1,957点。1点10円なので19,570円

1ヶ月の鋳造バー算定数が20,165回なので、年間で241,980回

241,980×19,570円=4,735,548,8600円(約47億円)

クラスプは部位によって価格が違い、材料差額は(841点~677点)となりますが、上記と同じように計算すると、約122~152億円となります。

クラスプとバー両方を足すと、およそ170~200億円の差額となります。

この浮いたお金を利用して、新規医療技術等の導入を行っていくのだと思われます。

3Dプリントデンチャーは適応拡大の方向か

令和7年12月1日より、CAD/CAM義歯の保険収載が決定しましたが、さっそく3Dプリントデンチャーの適応拡大の技術提案がなされています。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001597564.pdf

また、歯科医療について(その2)でも3次元プリント有床義歯について触れられており、「一般的な義歯製作に比べて、5時間程度の製作時間の短縮等が報告されている」との記載があります。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598463.pdf

閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)でも、

歯科領域のICT活用、歯科医師の不足する地域の分析等を含めた適切な配置の検討を含む歯科保健医療提供体制構築の推進・強化に取り組むとともに、有効性・安全性が認められたデジタル化等の新技術・新材料の保険導入を推進する。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf

とされており、3Dプリント義歯は適応拡大する方向で議論されているように感じました。

この記事を書いた人
八島 愛富

八島歯科クリニック 院長

歯科医師
広島県歯科医師会・会員
広島市介護認定審査委員経験者(1999年~2003年在籍)
臨床研修指導歯科医
広島デンタルアカデミー専門学校 講師
ケアマネージャー資格保持者
広島県がん診療連携登録歯科医

その他口腔機能の低下について