歯周病と糖尿病は互いに悪影響を与えあう

糖尿病と歯周病

糖尿病と歯周病は相互に悪影響を与えあいます。

歯周病と糖尿病の関係は以前から指摘されていましたが、最近は様々な研究からそのメカニズムが明らかになってきました。

糖尿病が歯周病に与える影響

統計的に、2型糖尿病の人は健常者と比べて歯周病の発症率が約2.6倍高いことが判っています。

(引用元:糖尿病診療ガイドライン2024|16章 糖尿病と歯周病

糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの働きが悪くなり、血糖値が異常に高くなる病気です。

血糖値が高い状態が長く続くと、血管に負担がかかり、全身のあちこちの血管が障害されます。

糖尿病により全身の血管が障害されることで、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害など、様々な合併症が引き起こされます。

歯周病も糖尿病により引き起こされる合併症の一つです。

糖尿病が歯周病リスクを高めるメカニズムは主に3つのメカニズムからなります。

血管障害による歯肉の組織修復能力の低下

糖尿病による血管障害は、歯肉にも起こります。

血管が障害されると血流が悪くなるため、歯周組織は酸素や栄養不足に陥ります。

低酸素・低栄養状態になると歯肉の生体防御機能や組織修復能力が低下します。

このため、歯周病菌による炎症が進行しやすい環境となります。

全身の免疫力の低下

糖尿病になると血流が悪くなるため、血液中の白血球が感染部位に到達しにくくなります。

このため、全身の免疫力が低下します。

歯茎も白血球による免疫機能が低下した状態となり、歯周病菌に対する抵抗力が落ちた状態となります。

唾液の分泌量の低下

正常人の場合,1 日の唾液量は 800 – 1500 mL分泌されています.

しかし,糖尿病の人では高い割合で唾液の分泌量が低下し、口腔感想などの症状が生じるようになります。

唾液には細菌の増殖を抑えるIgAやラクトフェリンなどの抗菌物質が含まれています。

このため唾液の分泌が低下すると抗菌作用も低下し、歯周病菌が増加しやすい環境となります。

歯周病が糖尿病に与える悪影響

糖尿病が歯周病に悪影響を与えるように、歯周病も糖尿病に悪影響を与えます。

炎症性サイトカインによるインシュリン抵抗性の増大

歯周病菌が出す内毒素が血管内に侵入すると、TNF-α(tumor necrosis factor-α)という炎症性サイトカインの産生が促進されます。

歯周病による炎症が長期化すると、血液中にTNF-αが沢山ある状態が続くことになります。

TNF-αには、インスリンの働きを妨げる作用があります。

インスリンは血糖値を下げる作用があるホルモンです。

インスリンの働きが妨げられると、インスリンの量が十分にあっても血糖値が上手く下がらなくなります。

このインスリンの働きが妨げられた状態のことを、インスリン抵抗性といいます。

インスリン抵抗性に対して、身体はなんとかしようとして、より多くのインスリンを産生しするようになります。

このインスリンが過剰に産生されて血中濃度が高濃度になると、高インスリン血症となります。

長期にわたってインスリンの過剰産生が続くと、インスリン産生細胞である膵β細胞が疲労していきます。

膵β細胞が疲労して機能が低下するとより重篤の糖尿病となります。

歯周病による食べる機能の低下

歯周病が重度~中等度進行すると歯がぐらぐらになったり、歯が抜けて無くなったりします。

歯が無くなると物をかみ砕く機能が低下します。特に歯が20本未満の状態になると、20本以上ある人に比べて有意に食べられるものが制限されるようになります。

食べられるものが制限されるようになると、きちんとバランスのよい食事ができなくなり、糖尿病の食事療法に悪影響が出ます。

また、歯が無くても食べられるような軟らかい食べ物は高血糖のものが多く、糖尿病の増悪因子となります。

歯周治療の介入で、糖尿病の改善効果が報告されている

厚生労働省の資料でも、糖尿病患者に対する歯周治療の介入で、HbA1cの平均値が減少するなどの糖尿病の改善効果があることが示されています。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598463.pdf

令和6年診療報酬改定で、医科の糖尿病管理に歯科受診を推奨することが要件に追加

令和6年診療報酬改定で、医科の糖尿病治療に対する生活習慣病管理料の要件に、「糖尿病患者に対して歯科受診を推奨すること」が追加されました。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001598463.pdf

糖尿病性腎症による腎透析には1人あたり年間400~600万程度の医療費がかかると言われています。

政府としては医療費削減の観点から、医科歯科連携を推奨して糖尿病性腎症の人を減らしてほしいとの思惑もあるようです。

腎透析が必要になると、患者側も大変ですし、医療従事者側も薬の投薬等に注意が必要になるので管理等が大変となります。

糖尿病性腎症の方を減らす施策は、患者・政府・医療従事者の「3方良し」の施策と言えます。

骨太方針2025でも、糖尿病と歯周病の関係が明記

閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)でも、

糖尿病と歯周病との関係など全身の健康と口腔の健康に関するエビデンスの活用

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf

と歯周病と歯周病の関係を明記され、医科歯科連携を政策として推進していくことが示されました。

また、

糖尿病性腎症の重症化予防等の大規模実証事業を踏まえたプログラムの活用を進める。

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/honebuto/2025/2025_basicpolicies_ja.pdf

との記載もあり、糖尿病性腎症による透析患者を減らしたいという政府の思惑が示されています。

歯周病と糖尿病の悪循環を断ち切ろう

糖尿病と歯周病はお互いに悪影響を与えあっています。

このため糖尿病の治療を行うと歯周病の改善効果があり、逆に歯周病を治療すると糖尿病の改善効果があります。

糖尿病は、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全などの合併症を引き起こします。その影響で、糖尿病患者の平均寿命は、男性で約10年、女性で約13年短くなると言われています。

歯周病と糖尿病を双方とも適切に治療を行うことで、歯周病と糖尿病の悪循環を断ち切ることが出来ます。

歯周病治療について

歯周病治療についてはこちらのページで詳しく解説しています。

参考文献

厚生労働省|口腔の健康状態と全身的な健康状態の関連

宮崎県歯科医師会|糖尿病と歯周病の意外な関係

日本歯周病学会|糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版

日本歯周病学会|歯周病と全身の健康

糖尿病診療ガイドライン2024|日本糖尿病学会

この記事を書いた人
八島 愛富

八島歯科クリニック 院長

歯科医師
広島県歯科医師会・会員
広島市介護認定審査委員経験者(1999年~2003年在籍)
臨床研修指導歯科医
広島デンタルアカデミー専門学校 講師
ケアマネージャー資格保持者
広島県がん診療連携登録歯科医

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