2024年3月5日、厚生労働省より令和6年度診療報酬改定の説明資料が公開されました。
これによると、2024年6月から、保険の白い被せ物(CAD/CAM冠)の適応条件が一部緩和されるようです。
保険の白い被せ物(CAD/CAM冠)の適応条件が一部緩和

【 CAD/CAM冠(1歯につき】
[算定要件(通知)]
(2) CAD/CAM冠は以下のいずれかに該当する場合に算定する。
イ 前歯又は小臼歯に使用する場合
ロ 大臼歯にCAD/CAM冠用材料(Ⅴ)を使用する場合
ハ 第一大臼歯又は第二大臼歯にCAD/CAM冠用材料 (Ⅲ)を使用する場合
なお、ハの場合は、当該CAD/CAM冠を装着する部位の対側に大臼歯による咬合支持(固定性ブリッジ又は乳歯(後継永久歯が先天性に欠如している乳歯を含む。)による咬合支持を含む。以下、咬合支持という。)がある患者であって、以下のいずれかに該当する場合をいう。
① 当該CAD/CAM冠を装着する部位と同側に大臼歯による咬合支持があり、当該補綴部位に過度な咬合圧が加わらない場合等
② 当該CAD/CAM冠を装着する部位の同側に大臼歯による咬合支持がなく、当該補綴部位の対合歯が欠損(部分床義歯を装着している場合を含む。)であり、当該補綴部位の近心側隣在歯までの咬合支持がある場合
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001221681.pdf
CAD/CAM冠用材料Ⅴ(以下「PEEK」と表記)は制限なしで大臼歯に使用できますが、CAD/CAM冠用材料Ⅲは大臼歯への使用に制限があります。
PEEKは色調に難がありますので、見た目に関してはCAD/CAM冠用材料Ⅲの方が優れています。(参考HP)
今回、このCAD/CAM冠用材料 (Ⅲ)の使用制限が緩和されました。
条件が細かくて分かりにくいですが、まとめると以下のようになります。
- 今までは、上下左右の第二大臼歯が残っている場合のみ、(CAD材料Ⅲを用いた)第一大臼歯へのCAD/CAM冠装着が出来た。
- 令和6年度改定で、条件付きで第二大臼歯もOKに。
- 被せ物を入れる側と反対側に大臼歯による咬合支持がないと駄目だよ。
- 上記に加えて、被せ物に過度な咬合圧が加わらない条件なら良いよ。
- 具体的に言うと、①被せ物を入れる部位と同側に、他の大臼歯による咬合支持がある。又は②被せ物と噛み合う相手が義歯か歯が無い状態で、かつ被せる部位の手前まではちゃんと自分の歯がある状態。のどちらかの場合だよ。
全面解禁とならなかったのは残念ですが、選択肢が増えたことは良い事だと思います。
中医協の議論で「大臼歯のCAD/CAM冠装着歯の予後に、装着部位による統計学的な有意差は認められない。」というデータを出していたので、将来的にもっと適応範囲が広がる可能性はあるとは思います。

エンドクラウンも新規収載
また、エンドクラウンという形態の大臼歯CAD/CAM冠も新規導入される事となりました。

既存のCAD/CAM冠では、歯の高さがない場合は維持が不足して脱離しやすいという欠点がありました。 今回導入されるエンドクラウンは、歯の高さがない場合でも脱離しにくい形態のものとなります。歯の神経を取った歯が対象となる方法なので、歯の神経が残っている場合はエンドクラウン処置は出来ませんが、新しい選択肢が出てきたのは良いことだと思います。
2024/5/15追記
エンドクラウンの適応条件は、「失活臼歯に対する単独冠症例」です。神経の無い大臼歯でさえあれば、前述の使用制限無しで治療が行えます。(参考文献:保険診療におけるCAD/CAM 冠の診療指針2024)
つまり、歯の欠損があり通常のCADCAM冠が適応外の場合でも、エンドクラウンであれば金属を使わずに保険で白い被せ物を入れることが出来ます。
参考文献
