中央社会保険医療協議会から令和2年度診療報酬改定に関わる資料が公表されました。
この資料を見てみると、改正内容の1つに「保険適応のインプラント治療の適応拡大」というものがありましたので、それについて解説していきます。
今回適応拡大されるのは、生まれつき6本以上の歯が無い人
6本以上の歯が生まれつき無い場合、先天性部分無歯症という病名が適応されます。
令和2年度診療報酬改定で、この先天性部分無歯症の方で以下の算定要件を満たす場合は保険適応でインプラント治療が受けられるようになります。
広範囲顎骨支持型装置埋入手術の要件の見直し
第1 基本的な考え方
6歯以上の先天性部分(性)無歯症等であり、ブリッジや部分床義歯等の一般的な補綴治療では治療困難な患者がいることを踏まえ、広範囲顎骨支持型装置埋入手術の要件を見直す。
第2 具体的な内容
6歯以上の先天性部分(性)無歯症等に対する広範囲顎骨支持型埋入手術の適応を拡大する。
[算定要件]
ニ 6歯以上の先天性部分(性)無歯症又は3歯以上の前歯永久歯萌出不全(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)であり、連続した3分の1顎程度以上の多数歯欠損(歯科矯正後の状態を含む。)であること。
中央社会保険医療協議会 総会(第451回) 議事次第
(注釈:広範囲顎骨支持型装置というのがインプラントのことです)
そもそも保険治療でインプラント治療って出来たの?
平成24年度4月の診療報酬改定から、条件付きでインプラント治療が保険治療に導入されています。
とはいってもその条件はかなり厳しいものです。
算定条件
①腫瘍、顎骨骨髄炎、外傷等により、広範囲な顎骨欠損又は歯槽骨欠損症例(歯周疾患および加齢による歯槽骨吸収は除く。)若しくはこれらが骨移植等により再建された症例であること。なお、欠損範囲については、上顎にあっては、連続した1/3顎程度以上の顎骨欠損症例若しくは上顎洞又は鼻腔への交通が認められる顎骨欠損症例であり、下顎にあっては、連続した1/3顎程度以上の歯槽骨欠損(歯周疾患および加齢による歯槽骨吸収は除く)又は下顎区域切除以上の顎骨欠損であること。
② 医科の保険医療機関(医科歯科併設の保険医療機関にあっては医科診療科)の主治の医師の診断に基づく外胚葉異形成症等の先天性疾患で、連続した1/3顎程度以上の多数歯欠損又は顎堤形成不全であること。
高知大学医学部付属病院/広範囲顎骨支持型装置埋入手術の算定要件および施設基準について
大雑把に言うと、顎の骨の1/3以上を失った人に対してのみ保険治療でインプラント治療が行えます。
2020年4月1日から、上記に加えて「生まれつき6本以上の歯が欠損している場合」で「連続した3分の1顎程度以上の多数歯欠損の場合」に保険治療でインプラント治療が受けられるようになります。
保険治療でインプラント治療が行える施設
医療機関ならどこでもできるわけでなく、以下の条件を満たした施設である必要があります。
- 歯科又は歯科口腔外科を標榜している保険医療機関であること。
- 当該診療科に係る5年以上の経験および当該療養に係る3年以上の経験を有する常勤の歯科医師が2名以上配置されていること。
- 病院であること。
- 当直体制が整備されていること。
- 医療機器保守管理及び医薬品に係る安全確保のための体制が整備されていること。
広島県では以下の4施設が該当します。
(参照元:中国四国厚生局/保険医療機関等・指定訪問看護事業所の届出受理状況等)
(追記)
広島県以外の方からの問い合わせが何件かあったので、保険治療でインプラント治療が行える施設の調べ方を載せておきます。
生まれつき歯が無いかどうかの検査は一般の診療所でも行えます
生まれつき歯が無いかどうかは一般の診療所でもレントゲン撮影で診断することができます。

大学病院などの大病院は紹介状なしで受診すると3,000~5,000円の特別料金が追加でかかります。(政府広報オンライン/ 紹介状なしで大病院を受診すると特別の料金がかかります。)
そのため、心配な人はまずかかりつけの歯科医院で検査・診断を行ってもらい、必要であれば上記医療機関に紹介状を書いてもらうようにしましょう。